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2023-04-03 [長年日記]
_ [読書] 『その昔、N市では』カシュニッツ(酒寄訳)、東京創元社、2022。
たぶんラジオで聴いて興味を持ったのだと思う。数編読んで、これらをどう味わえば良いのかわからなくて途方に暮れている。怪談とも冗談ともつかぬ数々の物語。事件は起こるが、その原因もわからなければ、何ら教訓も謎解きも無く、まるでニュースのように奇妙な出来事が語られる。で、読んでる時に、階段に重ねておいていた本やDVDが崩れ落ちてきてはっとする。この付会は、物語とは関係が無いのだった。しかしこの些細な出来事が、むしろカシュニッツの書く物語よりも自分には物語性を持っているように思われたのだった。「船の話」と「ロック鳥」を読むと、この物語たちに出てくるものたち、船に乗った妹や"ロック鳥"たちのように、まるでこの本が在るか無いのかわからないもののように思えてきた。人に読ませようとして書いたもののようには思えず、何の因果も無くただそこにあって、しかしこの世にあってはならないような不思議な存在がただ、在る。まるで無いのと同じようにそこにある。多分こんな読み方は正しく無いのだろう。正しい読み方というものがもしもあるのなら、だけど。