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2009-10-30 神田へ。 [長年日記]
_ ひさびさに東京方面で仕事。
仕事といっても、半ばボランティアのような感じだが、同業他社で同じような問題に悩んでいる人たち(仕事の進め方もさることながら昨今は景気の心配を共感するなんてあたりも…)と、コンサルティングの先生が集まるばであり、雰囲気も今のところ悪くはない。この打ち合わせにどう臨むかということがそのままその打ち合わせの重要性自体を決めているのだと思っている。
終わって神保町へ向かった。小川町にもY's Roadがある。モンベルのパンツを買った。ベルクロで足首のところを絞れるので冬のツーリングには良さそうだ。上はまだしばらくはTシャツとウィンドブレーカーで持たせるつもり。
_ [統計学]ブラウン・ラチェット。
正確には統計学じゃなくて、統計力学。私は学生時代はどちらかというと統計学より統計力学のほうに関心があった(本当は統計学の最小二乗法には興味があったけど、当時の指導教官殿は誤差の少ない実験をするほうが重要という考えだったので大っぴらに取り組むことには心理的に抵抗があった。思えば何て窮屈な考え方だったのだろうか、自分)。しかし胸を張って統計力学が好きといえるほど統計力学のことを理解してはいないようだ。
ブラウン・ラチェットというのがある。1)ランダムな動きをしている気体分子がぶつかると左右に揺れる、非常に軽い羽根車を用意して、車軸に取り付ける。2)車軸の片端には(対称な山型ではなくて)非対称な形に歯を刻んだ歯車をつけます。3)この歯車の歯の部分に軽いばね板を当てる。これによって歯車は、ある方向にしか回らなくなる。逆の方向に回ろうとすると、ばね板が非対称な歯の片側と噛み合って回転をじゃまするのである。
こんな仕掛けを作っておいて、車軸の真ん中に細い糸をぶら下げる。糸の先には軽いけど重さのある荷物、たとえば蚤を一匹ぶら下げる。上の仕掛けを、とある温度の空気の中にさらしたなら、ランダムな気体の運動から、蚤を巻き上げるという「仕事」を取り出すことが果たしてできるであろうか?
_ という問題。答えはノー。軽い羽根車が実現できないからじゃない(微細加工技術を使えば実現できる)。この問題を出したのはファインマン。そういうわけで、学生の頃はちょっと舐めてたファインマン物理学の第二巻を、神保町で買ってまいりました。扉をめくると懐かしいボンゴを叩くファインマンの写真。勉強は一生続く。勉強の仕方を学んでその楽しさ(と苦しさ)を知る人間ならばだれでもそうだろう。教育を受けたということは、つまりそういうことだと思う。
_ ちなみに筋肉の収縮の基本になるアクチンとミオシンは上に書いた仮想的な羽根車のように、ブラウン運動の影響を受けてランダムに揺さぶられているはずだ。それなのにある方向に収縮運動が起こるのはなぜだろう?なんてことを考えている人たちがいる。答えだけ言えば、一方向にだけ動くように局所的な力の場を与え続ける化学反応が起きているから、ということらしい。調べ始めたばかりでまだ理解できてない。