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2019-10-19 [長年日記]
_ [読書] 「ある夢想家の手帖から 下」、沼正三、太田出版、1998。
まだ途中なのだが、この人は凄いなと思う。下巻では幾つものSF作品が示される。その中には有名なディックの「高い城の男」や「宇宙戦争」(この作に氏が惹かれたのは、火星人が人類を食糧として飼育する未来への夢想である)、「山椒魚戦争」、さらにはヴェルコールの「人獣裁判(!)などもあれば、和訳がどうやら出ていないジェームズ・ブリッシュ(宇宙都市シリーズやスター・トレックのノベライゼーションて良く知られる)の「巨人族の娘」などが引かれており、私の読むべきインデックスもそれゆえに増えた。この人は独語も仏語もおそらくはラテン語も自由に読みこなすことのできる人らしく、それがもしひたすら自身のマゾヒズムを満足させるがために身につけた教養なのだとしたら、勉強のあり方としては全く正しいことと思う。奇譚クラブに記事の書かれた当時の検閲を意識して敢えて和訳していない部分もある。氏の白人崇拝の源となった個人的体験(ドミナとしての英国夫人との運命的な出会い)も興味深く読むことができた。私なんぞは修行が足りないというか、真性マゾだなんてとてもとても自称できたものではございません。