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2023-09-22 [長年日記]
_ 釣巻和(つりまきのどか)さんの漫画で初めて読んだのは『水面座(みもざ)高校文化祭』だったろうと思う。全3巻のこの漫画は文化祭が始まって終わるまでを描いている。連載中はどんなだったろう。月刊誌で3年にわたって描かれていたらしい。雑誌が発売されて読むたびに「まだ文化祭やってる!」という訳だ。単行本で一気に読むのとは時の流れ方が違う。そんな終わらない楽しい時間の幻惑を楽しめなかったことは残念だったかもしれないが、文化祭実行委員の都ちゃんがご近所の商店街の人々からも炊事のおばちゃんたちからも愛される元気な娘なので読んだら絶対好きになる。
その後僕に起きた銭湯ブームの影響で読み出した『のの湯』は、しばらく釣巻さんの絵だとは気づかなかった。ちなみにこの作品はまだ終わっていない。原作の久住さんがいけないんだ、と思ってたが、久住さんは原案協力、ともされていて、どのような分担なのかは定かでない。
それはともかくこの漫画家さんには興味がどんどん湧いてきて、『くおんの森』を読んで今、『童話迷宮』を読み始めたのだが、ここで僕は路頭に迷った。どう味わえば良いかわからないのだ。この漫画は小川未明の童話を元にしているとのことなので、何に対しても説明を求めずにいられない僕は新潮文庫版『小川未明童話集』を求めることにしたのだった。なぜ新潮文庫を選んだかも覚えていないが、僕にとって新潮文庫は森鷗外も夏目漱石もこの文庫で読んだ、という青春の文庫ではある。それが届いたのが昨日。思えば名高い『赤いろうそくと人魚』すら読んだことが無い。しかし、昨晩はAmazonの誤配(まただよー!)の処理のためにオペレーターさんと長々とチャットしてて読まず。今朝になって簡単な朝食の後その『赤いろうそくと人魚』だけ読んでみた。北国の深い海に暮らす人魚は華やかな人間社会に憧れて海神の祀られている神社で娘を産み落とす。娘は祈願に来た老夫婦に拾われて…。主観で書くと、顛末は童話にあるまじく凄惨である。この人魚は北の深い海に暮らしているというイメージとも相まって、ラブクラフトの世界の住人のようにさえ思えたのだった。なぜこの物語が代表作のように扱われてきたのかは僕にはわからないのだ。が、この物語を知った上で釣巻和に戻ろうと思う。