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2016-08-25 [長年日記]
_ [物理学] ブロッホの定理・続
ウィキペディアに書かれた定理の導出はキッテルの固体物理学入門にほぼ従っており、周期的境界条件を用いている。浜口智尋 電子物性入門もそう。周期ポテンシャルの仮定と周期的境界条件とはちょっと意味が違っており、後者は無限に続く媒体を仮定する代わりにとある有限の長さLを仮定して、端と端で状態が同じになるようにつなぐといういわば弁法であり、妥当な仮定であることは必ずしも自明ではないと感じる。そのことを明示的に扱っている説明には今のところ出会っていない。ただ、結果にはその周期境界条件の周期L(あるいはN)が含まれないから、周期的境界条件は特別な仮定ではない、ということなのだろう。でもそう明言しているものも見つからない。御子柴先生の半導体物理の本では、周期ポテンシャルは仮定するが周期的境界条件を仮定しないブロッホの定理の導入が示されている。なかなか理解しにくいが、シュレーディンガー方程式が2階の微分方程式であるという性質に注目して周期ポテンシャルを適用すると、可能な解はブロッホ関数の形となる、というように導出している。たぶんこれと類似な考察によって周期的境界条件を使って良いことの保証がなされるのだろう。