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第8回(98/07/31)

藤枝−金谷 〜大井越 島田のスタンプはいずこ?〜

 

<introduction:7/31 22:05 金谷町 富士見・ホテル オン・ザ・ヒルにて>

 確かにここは丘の上には違いない。

 夜もすっかり更けて、これから石畳を歩くのは危険極まると思われたので、SLの走る金谷の駅前で電話帳を繰り、ここのホテルを見出したのだった。電話をすると宿の主人が、

「駅から少し距離があるし道順が分からないでしょう。これからちょっと街の方に降りていく用事がありますから車でお迎えに参りましょう」

と言ってくれたには有り難い、渡る世間に鬼やんま。

 到着してみて初めてわかったのだが、どう見てもラブホテルだなあ、ここは。チェックインの時に宿の主人が

「これ、サービスでお配りしてるんですけど…要りませんよね、ハハハ」

と言ってこちらに見せたのは女性用のストッキングであった。辞退申し上げたのだけれど、かかる宿ならではの「チョット嬉しいサービス」という感じで妙に艶かしい雰囲気を感じてしまう。でも折角だから貰っておいても良かったかな。何かの都合で銀行強盗に行かねばならないような事態がこの先無いとも限らないのだし。

 フロントにビールを頼むと、ドアの脇にあるパチンコの景品交換所の窓のようなところから渡された。

 ちょっと部屋のドアを開けてみると階下のフロントで電子音がけたたましく鳴る。どうやらコッソリ外に出ることはできないようだ。部屋に電話が掛かる。

 「フロントですが、外出されますか?」

 いいえ。飲んで寝ますからあと二本持ってきてください、缶ビール…

 汗で濡れたズボンを軽く洗ってベランダに干すと、街の明かりはまばらである。近くの部屋からカラオケの音が聞こえてくる。明日はここからどこまで行けるのだろうか…

 と、何だか「きめうきめう」な旅情を感じている抜け参りの8回目、はじまり。前置きは長いが踏破した距離は短いぞ。


<14:10>に、前回の到着地点である藤枝に到着。ところでワタシは或るものを求めてこの間スイカアイスを買った商店街の方へ戻っていった。あった!

 それは何を隠そう藤枝の宿のスタンプである(なんか先回と似たような事書いているなあ)。このツボは、この辺りの名物である染飯の商標を象ったものであるらしい。さて、それでは先を急ごうかね。


神明神社で採取

 程無く瀬戸と呼ばれる辺りに差し掛かる。石野モータースという自動車整備の会社は、もと染飯茶屋。
<15:00> 松並木がまばらに残る道を更に行く。1時間と立たぬうちに一里塚の跡に到着。小休止していると、車に乗った初老の御仁がワタシに声を掛ける。

「ウォーキングですか?」

「左様である」

「どこまで?」

「金谷を越えて、出来たら掛川まで」

「ああ、じゃあ着いたら夜だねえ…」

 車の御仁はいろいろとこの辺りの見所を教えてくれた。小夜の中山には子育て飴を売る店があって100歳になるお婆さんがやっている。夜泣き石と言うのもある…

 そう言えば今日のワタシは実は重大な過ちを犯している。掛川までの地図を完全に準備せずに来てしまったのだ。何しろ、この辺りになると、二万五千分の一の地図というのも、必ずしも書店に行けばその場で入手できるとは限らない。東海道人種は今や極少数民族なのである。まあ、現地調達で良いやなんて、甘い気持ちで「太陽コレクション」に載っていた地図のコピーを持ってきているのだが、いかんせん小さい。当然見所の事前チェックも甘いのである。地図の無い一人旅は不安この上ない。本屋が無いんだよ、この辺…

<16:00>島田(第二十三宿)到着商店街の中である。地元の銀行の前に宿場の表示がある。ほほう、島田の宿場スタンプは奴サンの図案なのか。さあ、どこにあるんだろう?和菓子屋に入って店の主人とおぼしき方に今までの宿場スタンプを見せて、こう言うものがどこかに無いかとたずねてみた。知らないらしい。だが、それならば市役所の観光課で訪ねてみるがよかろうというので、少し寄り道だが行ってみた。

 観光課の窓口の女性に訪ねる。

「こちらでは扱っていません。島田市博物館に問い合わせてみましょう」

 おお、渡る世間に鬼ヒトデ。しばし待つ。だが、島田市博物館にも無いと言うことだった。一体どこに?これはまた本格的の長距離スタンプラリーになってしまったゾ…

宿場表示の下に白い色で奴サンのスタンプの図案が描かれているのに…

 そこで再び商店街に戻る。ありそうなところをあちこち探して見るのだが、無い、無い、無い。なにやら市制50周年の記念スタンプなんてのもあって、紛らわしい。

 JR島田駅にも行ってみた。観光案内の女性に訪ねてみる。

「こちらで扱っているのはこういうものだけですが…」

それは確かに奴サンの図案のスタンプだが、なんか違うぞ?「帯祭りとバラの街」なんて書いてあるし大きさも形も違う。これじゃないんだ…

 止む無し。悔いが残るが先へ進まない。大井川の方に行ってしまおう。くくっ…(笑っているのではないぞ、泣いているのだ)

水。

 <17:00>もそろそろ近いなあ…という頃に、大井川の川越諸遺跡のある辺りに到着。宿場で賑わった頃の風情を再現している。やはり静岡の諸君は旧街道を大事にしているのだなあ。

 朝顔の松というのは浄瑠璃「生写朝顔日記(しょううつしあさがおにっき)」宿屋の段にちなんでいるという。朝顔という瞽女(ごぜ)は流浪の末失明したもと秋月家の姫君。大井川に至るが大雨のために渡ることが出来ない。自殺しようとしたところを助かり、奇跡的に眼が開き、その時に初めて見たのがここの松であるという。

「爪音(つまおと)は松に聞けとや春の風」

という句碑がある。これは「こがね丸」で著名な巌谷小波の作。

朝顔の松の碑

 そして島田市博物館に足を踏み入れる。玄関口には幾つかスタンプがあるが、目指す宿場スタンプは無い。「太郎べえと次郎吉」って、一体誰なんだ?「弥次喜多」が元祖でこっちは本家、とかいうことかなあ…

 


<17:30頃>大井川を渉る。川止めに会わなくて良かった。

渉るとすぐに金谷(第二十四宿)である。金谷宿の表示が目に入る。すぐ近くにスタンプもあった。こうでなくっちゃ。そうか、ここにも石畳の道が残っているんだなあ。

 それにしても、島田のスタンプはどこにあったのだろう?いかんなあ、島田の諸君。旅人を惑わせて何が楽しいのだ。

金谷の方から見た大井川

 道はなだらかな上り坂。そこそこの街並である。本町通で蕎麦屋を見つけた。この辺りでそろそろ夕食としようか。おっと、書店もあるではないか。この先の地図を購入。これでとりあえず日坂までは行けるかも。

  そば定食を食していると、あたりはだいぶ暗くなってきた。夜である。食事を終えて金谷駅のほうに向かっていった。ガード下をくぐって日坂へ向かう坂に差しかかる。「暗い・・・」

 そして石畳の道への入り口を見つけたが、これはいかん!蛇の出そうな藪があるではないか。いかにダブルヘッダーの懐中電灯をもってしてもこれをいくのは危険極まる。いや、危険極まりない。極まるのと極まりないのとどっちがより危険なのかわからないが、ともかく先へ進むのはよそう。駅に戻って宿を探そう。でもあるのかな、泊れるようなところ…(以下このページの先頭に戻る)。

<教訓>

 地図は事前に入手して見所をきちんと押さえておくべし。ヨコハマに帰ったら五十三次の分を全て書店に注文しようっと。


<お土産>

ワタシを悩ませた偽の(?)スタンプの数々

JR島田駅のスタンプ

 


<脚注>

1.渡る世間に鬼やんま…何を詰まらない地口をとお思いだろうが、この台詞は昔「ダンディ2華麗なる冒険」のなかで声優の広川太一郎さんが飛ばしていたギャグの一つ。広川さんは昔「ムーミン」のスノークの声をやっていたヒトで、異常なテンションをもってこのような軽いギャグを無限に繰り出すことで著名なのだが、ワタシには20年ほど前にラジオ関東で「男たちの夜…かな?」という番組をやっていたことの方が思い出深い。どうでも良いヒトにはどうでも良いことでした…

参考URL:広川太一郎データベース http://web-conte.com/red/database/hirokawa/hirokawa.html

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2.きめうきめう奇妙奇妙。出典は「東海道中膝栗毛」。<戻る

3.染飯クチナシで黄色く染めたご飯。和製サフランライスという所であろうか。<戻る

4.こがね丸児童向けの小説で、こがね丸とは擬人化された犬であるが、こんなの知ってる人は少ないことだろう。ワタシは昔、NHKラジオの朗読の時間で聞いた記憶しかない。<戻る

 

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