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第6回(98/07/18)

吉原―江尻(清水) 〜熱愛二人旅(壱)〜

 

<introduction>
博士、ボクも連れていってくださいよ!」と、同僚のMAX君が或る日私に言った。ワタシがあんまり楽しそうに歩き旅のことを自慢するので、どうやらその気になったようだった。ホントはヒトと歩くのは苦手なんだよね、ヒトにペースを合わせるのが苦手なの。

「道は厳しいぞ。付いて来れるかな?」
「たとえこの足がマメだらけになろうとも、あなたと共に歩みたいと思います」
「MAX君!」
「博士!」

 このあと二人がヒシと抱き合ったかどうかは定かではない。これが熱愛二人旅のはじまり。


<1998 7/18 9:00>
 Toe急Kick名駅改札前で二人は落ち合った。MAX君は恋女房を置き去りにしての、私は日々の憂いからのそれぞれ訳有りの抜け参り、ああ二人、愛の逃避行。とまれヨコハマへ出て東海道線に乗ろう。

「博士、急行は使わないのですか?」
「いかんゾ、MAX君。この先何度も行って帰るのを繰り返すのだ、いちいち急行だの新幹線だの使っていられるものか。いかんいかん。」
「そうですか…」

 先回の旅に於いてこの経済面の問題を認識したゆえワタシは譲らないのである。MAXクンは今回限りかもしれないけど、ね。


<12:00頃>
 電車を乗り継いで乗り継いで乗り継いで、ようように富士に着いた。フジチャク、なんつって。駅前商店街を通って旧街道まで出る。

「ここの商店街、結構デカイっすね」

 何を隠そう、MAXクンは商店街にはこだわりを持っていて、住むんなら商店街の充実した土地がよいと、常々言っているのである。Kick名駅の商店街には若干不満であるようだ。

 『ふじむら』という飯屋にて定食を食して、富士川へ向かう。途中ワタシが帽子を飛ばしたり、MAXクンがしょうの無い地口を飛ばしたりしながら睦まじく歩く二人。なんだかホントに膝栗毛のようではないか、ワタシ達は。

 程なく富士川に出た。

「博士、ここで帽子を飛ばしたりしないでくださいね」

などとワタシを気遣うMAXクン。ウい奴よなあ。さあ、ドンドンいこう。



富士川

 小1時間ほども歩いた頃、我々は中之郷というところに辿り着いた。緩やかな坂の中ほどにベンチがあるゆえ、しばし休息。記念の写真も撮りましょうね。

「博士、ボク達モウ20kmくらいは歩いたんですかネエ」
「いや、まだ10kmにもならないよ」

 そう、先はまだ長い。なにしろ今日は後に峠越えが控えているのである。再び出発だ。坂の頂上当たりの小さな店の自動販売機で、MAXクンはウーロン茶の1リットルビンを購入した。かさばるのになあ…。

<14:30>
 やがて我々は中之郷から小池というあたりの坂を登りきり、下りに差しかかる。海の方には工場群が見える。細い道を降り切る



中之郷におけるMAXクンの余裕のVサイン
(プライバシー保護のためモザイクを使用しています)

 と、そこは蒲原(第十五宿)である。

「お、あの小屋は何かな?」
「博士、スタンプがありますよ」
「おお!かの有名な東海道スタンプではないか!」 →

 このスタンプ、必ずしも宿場にしか置かれていないという訳でも無く、置き場もバラバラであって、この後方々でワタシを悩ませるのだが、誰が何の目的でおいているのか今一つ実体がわからないのである。



東海道スタンプ
(チョットかすれたけど『夜の雪』)


夜の雪の碑

「宿場毎にあるのかな」
「じゃあ、今までにもあったんでしょうね。博士、東海道ウォーキング最初からやりなおさなくっちゃ」
「悪質な冗談はやめたまえ」

 蒲原の辺りは旧宿場町を強く意識した町並みになっている。なまこ壁の家だとか広重の「夜の雪」の記念碑だとか。70年前のガラス窓を今も使っている家や大正時代の折衷式の洋館などもあり、なかなか風情がある。さ、次は由比だな。

 ワタシのキライな国道1号線に出たころ、不意にMAXクンの携帯電話が鳴る。MAXクンの恋女房からであった。彼と彼女の間にいかなる会話が為されたかは不明だが、そのときの私への彼女の言葉。

「うちのダーいつも日曜日起きるの遅いから、毎週連れ出してくださいな、博士」

 MAX夫妻は我が御近所さんである。しばしば、二人で外出して外で喧嘩する度に我が家へ遊びに来て気まずい雰囲気を和らげて帰ったりするのである。ワタシを当て馬にしてはならない。

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<注意:本文中プライバシー保護の為、実際の人物とはパーソナリティを変えてあります>


博士…このページを初めてアップしたときワタシは自ら"Dr.Monstrous"などと名乗っていたのでその名残がネット上の随所に残っている。決して経歴を詐称しているわけではない。<戻る>