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2011-11-25 [長年日記]
_ [漫画] 「キャプテンKen」手塚治虫。
読了。舞台の火星はほとんど西部劇の世界である。もしかしたらバローズの火星シリーズを意識してたかもしれない。火星撃ちがどうして必殺技なのか全く分からない。キャプテン・ケンはケンと言う名の少女を守る謎の人物だが、これが誰なのかという懸賞が連載時に掛けられたそうだ。正解者は2人しかおらず、うち一人はのちに虫プロに入ったのだそうだ。このときの懸賞は手塚先生の色紙。しかし手塚先生はその色紙を描くことは無かったのだそうな…。気になるのは、この連載が初めからケンは何者?という懸賞を企画していたかどうか。あるいは物語が進行するにつれてそのような企画に至ったのか。後者だとすればそれはおそらく読者の反響を編集部が受けとめてそうなったと想像される。週刊漫画の幸せな三者−読者・作者・編集者−の蜜月の時代であろう。
たぶんこんなことを書いてしまってもネタばれに近いのだろうが、この作品は手塚治虫の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」なのである。ここに書かれているタイムパラドクスへの考え方は物語用に強引に簡略化されている。過去に戻った人間は未来へは戻れない。タイムトラベルは一方通行の旅である。そのほうが歴史が狂わないから、というのが手塚先生の言い分なのだが、それはおかしいだろう。そしてもう一つこの作に明白なのは、手塚先生の異形の愛への執着である。異種間に芽生える過度に平等な恋愛、これは変態としか言いようがない。母へのコンプレクスの件はさらに後年の作品を紐解く必要があるだろうし、少女マンガの母恋ものとの関連にも注意する必要があるのではないかと思う。