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2018-04-07 [長年日記]
_ 神奈川学習センターへの通学路、鬱金桜。
うちの近所にも昔大きな木があったが、古い木だったからだろう、ある時切られてしまった。道の上に大きな枝を張り出してた。他大学の図書館に貸し出しを依頼していた本を受け取りに来た。ボルツマンの原論文を収録した本。アインシュタインの論文やニュートンの著作は和訳が出ていて比較的容易にふれることができるのに、彼らに匹敵する大きな業績を残したボルツマンの論文の和訳はあまり多く出ていないと思う。というわけで借りた本はもちろんドイツ語なのだ。ドイツ語なんてほとんど読めないのに。で、そこに収蔵されている論文の中で興味のあるのは、著名な「ボルツマンの重畳原理」の原論文。さまざまな線形応答は現代においてもきわめて有効なツールとなっていると思うのだが、その原論文を引用している論文なんてめったにないだろうし、ほとんど読まれてもいないんじゃないかと思う。私がこの理論に出会ったのはたぶん修士課程のことで、斎藤信彦先生の「高分子物理学」でその名を知ったんだと思う。当時世話になった講座の教授が、「この理論は因果律と刺激応答の線形性を仮定して導かれているが、因果律は結果は原因に先立たないということだからほとんど自明で仮定と言えないほどのものだ。線形性は仮定というよりもそれが成り立つように実験を設定する条件と言える。だからこの理論はほとんど何も仮定していないということになる」と言っていたのを覚えている。斎藤先生を含めて日本で高分子物理学やレオロジーといった分野の研究を展開した人々がこの原理の意義を強調して下さったおかげなのだろうか、その分野にかかわる人たちにはなじみ深い名称となっているようだ。