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2021-03-08 [長年日記]
_ 今日も寒うござんした。仕事の休憩時にちょいちょい『小説 田中絹代』を読んでた。無声映画の頃からの日本映画の歴史なんかもちょっとわかったりして面白い。著者・進藤兼人さんは明治45年という大正時代とのちょうど境目に生まれた人で、関東大震災の頃は12歳という勘定になるから、その頃の記憶も鮮明だったろう。その翌年に蒲田の松竹撮影所が再開となり、田中絹代も大阪からこちらに移る。そんな辺りまで来た。当時はまだ無声映画の時代で、初のトーキー『マダムと女房』の話がこれから、というところ。
今でも感謝してるのだが、私が中学の頃には、必ずしも豊かで無い我が家に日本大百科事典「ジャポニカ」があった。多分親が頑張って月に一冊か二冊ずつ買って全巻揃えたのだと思う。好奇心旺盛な中学の自分には今のインターネットのように多くの有益無益な情報を与えてくれた。エッチな項目はもちろん喜んで読んだ。図版も多かったので何かにつけて紐解くのは楽しみだった。その中に、映画という項目があり、『マダムと女房』の一場面が載っていたのは忘れられ無い。どうということのないシーンだが、日本初のトーキーというキャプションがあってよく覚えている。他にも世界初のトーキーとして、白人の役者が顔を黒塗りにして歌っている『ジャズ・シンガー』の一場面、アニメの代表としてポール・グリモーの『王様と鳥』(当時のタイトルは『やぶにらみの暴君』)なども載っていた。そうそう、ジャン・ポール・ベルモントの『勝手にしやがれ』の写真も載っていたっけ。百科事典は、社会人になったら是非とも自宅に揃えたいと思っていたのだが、いつのまにか紙での出版はされなくなってしまった。こういうものを失ってしまった世界は今、少し貧しく見えなくも無い。我が家に紙の百科事典が揃うことはこの先ないとは言い切れないな。でも何故か『日本語大辞典』が二階の踊り場に全巻置かれてる。ホントにちょっとしか参照してないが、古いものを時間をかけて読めるようになったら大活躍してくれることだろう。