RSSフィード:http://alpha-ralpha.com/diary/index.rdf
2016-04-30 [長年日記]
_ 今日も昨日と同様朝が肌寒い。空はまるで秋空。昨日など絹雲(すじ雲という奴。『巻雲』と書いて『けんうん』というのが現在は正しいらしいが、絹雲の方がぴったりくる)が真っ青な空に刷毛で刷ったようにあらわれていた。
_ iTunes復旧。
実言うとずっとiTunesがエラー7とかいうのを吐き出して動いてくれてなかった。理由がわかんないがパソコンの別のアカウントでは動いてたので聞くときはそのアカウントで、という不自由を辛抱してたが、たまたまとあるサイトに解決策らしきものが載ってたのでダメもとで試したら復旧。このGW一番の収穫になるかもな。
_ [音楽] ”Let it Be”, Beatles。
中学校の頃、周りの友達が皆ビートルズに夢中になっていた。私は何しろ当時家にステレオセットが無かったのでLPレコードは数枚しか持っていなかった。だから友達とLPの貸し借りをする頻度はそう多くは無かったのではないかと思う。その代りラジカセで盛んにFM番組の”エアチェック”を行なってたくさんのテープを作った。FM番組でアルバム一枚をほぼ全曲放送するのはたいていの場合新譜だったから、オリビア・ニュートン・ジョンとかミシェル・ポルナレフとかリンダ・ロンシュタットなんかをテープに録って良く聞いた。サイモンとガーファンクルはたまたま1週間の間ブレッド&バターのMCでずっと流していたことがあったから全部テープにとって、ほとんどの楽曲に触れることができた珍しい例だ。カーペンターズもダ・カーポのMCで同じように特集してた。ビートルズやボブ・ディランももしかするとやっていたかもしれないのだが、自分にとってはより古い世代の音楽という印象だけがありファンとなることは無かった。
昨年あたりからほぼ毎月1枚ビートルズのアルバムを年代順に求めて昨日、最後のアルバム”Let It Be”に至った。曲は有名だったから、ビートルズを認識する以前から「レルピー、レルピー」と連呼するこの曲のことは知っていた。メンバーが不和になり同年解散という頃のこのアルバム”Let It Be”が一つのバンドのアルバムとしては一貫性の無いものと感じるのも仕方ないだろう。そんな中でポール・マッカートニーの”Let It Be”と”The Long and Winding Road”が異様な美しさで輝いている。後者はオリビア・ニュートン・ジョンもカバーしていたので今も私の愛唱歌だ。ポールはJ.S.バッハに比肩するような卓越したメロディメーカーだと信じられる。この二人に比べればエルトン・ジョンやディーリアスの美しい旋律さえ引けを取る。
こうやって一つのバンドの最初から最後までのアルバムを順を追って聞いていくと、やはりこの最後のアルバムは何とも哀調を帯びて聞こえる。子犬のようにじゃれあっていた仲良しの友達も別々の高校に進んでいく。そのことを男の子たちは特に寂しいなどと言い合ったりはしなかった。だがもし、あの頃の多感な自分がビートルズのファンであったなら、そして卒業の頃に”Let It Be”を聞いたなら、きっと一人で大人しくしていることはできなかっただろう。空しさに一人で耐えることはできなかっただろう。そしてもしかしたら、そんな悲しい思いを一人で耐えていた友達が、あの頃私の身近にいたのかも知れない。
その君にいま言ってあげたい。その気持ちを恥じることは無いし、忘れ去ろうとしなくてもいいのだと。これから大人になる君は大人になるために子供時代のいろいろな楽しいことを諦めなくてはならないと思っているかもしれない。でもあきらめることなど本当は何一つ無いのだ。そりゃあ勉学や仕事そっちのけで漫画だの音楽だのSFだのに耽溺することはいつもできるわけじゃないかもしれないが、君は一時それを棚上げするに過ぎない。君がそれを忘れずにいて、いつか再びそこに返った時、それらは君を懐かし気に抱擁してくれることだろう。放蕩息子を温かく迎える父親のように。何も諦めることは無い。人気者の誰かさんのように”それ”がうまくできなくても、それが好きなのだったらそれを好きだと言うことを諦め無くていい。それに費やすだけの十分な力もお金も時間も場所もなかったとしても、そのためにそれを諦めることは無い。かつてはうまくやれていたそのことが不幸にして二度とそんな風にうまくできない境遇になったとしても、好きだったそれを捨て去ることなどない。きっとちょっと違った形であれ、再び戯れることができるようになるだろう。ただし戯れるための感受性を失いさえしなければ。だから感情の老化にだけは気をつけたまえ。枕元である朝突然ポール・マッカートニーが”レルピーレルピー”と歌う声が聞こえるかもしれない。そしてその時の君には、それが”レルピー”とか”LP”とかのさえずりではなく、"Let it be."という君にとって重要な意味を持つ言葉であることがわかる。そして君は耳に残る昔の歌達を再発見するだろう。そんな時は確かに来るのだ。
大人になってできること、わかること、ありますね。 <br>そして、そのときにしかできないこともあるような気もします。 <br>バイトで無理してでもいいギター買っておくんだったな、とか。 <br>どのみち、それを仕事にする根性は無かったと思いますけれど、 <br>後回しにして別の「何か」を手に入れていた…と思いたいところです。