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2005-09-01 悪夢。 [長年日記]
_ 真夜中に恐ろしい夢を見た。絵空事と思っていた過去の大虐殺の伝説や悪霊の存在は、夢の中では絶対的に真実であり、証明なしに信じるべきことだった。丁度、目覚めているときには、世界が自然科学の摂理に支配されていることを絶対的真実として認めざるを得ないのと同じように、それらは夢の世界を支配する法則だった。
夢の中の世界は、超常的で不吉な摂理に支配されている。その世界で私は、私の体が一部分ずつドリルのような器具や肉食獣の歯牙によって確実に損なわれていく過程の真っ只中にあるという事実に初めて気づいた。あるいはそれは私ではなくかけがえの無い私の友達の身に起こっていることだったかもしれない。どちらも同じくらい苦痛だった。わが身にそれが起こっていたとしたらもちろん限りなく苦しいことだろうし、愛する友が今確実に失われていく最中であって私には手の施しようが無いと言うことはまた大層苦しいことだった。
その友人が、「本当に見ないほうがいいこと、知らない方が良いことはあるものなんだ」、と不吉な言葉を吐いた。真実を探求することは正気の世界では幸福を追求する方法だが、夢の世界の中では不幸へと到る方法なのだった。私の身の上に起こる不幸で汚らわしい事柄は、がっちりと私を捉えて離さない。心の底から恐怖の叫びを上げた。叫ぶことだけがかろうじて正気を保つ方法だったのだ。実際に叫んでいたかもしれない。
目覚めてもしばらく、電灯をつけることができなかった。「本当に見ないほうが良かったこと」である何かが、見えてしまいそうな気がしたため。
不養生で我が身を損なっている日常への無意識的な恐怖の見せた夢だったのだろうか。本当に恐ろしく、そのくせ何故かまた懐かしく、そこに戻って行きたくて仕方ないと思える夢でもあった。