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けいりう堂日記

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2016-07-10 [長年日記]

_ ネットで曲を探していて寝るの遅くなった。小学校の時に、教師の一人が高学年を率いて器楽合奏を行なっていた。私が高学年となった時にはもう何年かは続いていたようだった。一年上の先輩たちの演奏を見て、転校してきた私はその見事さに感動を覚えていた。誰がどの楽器を演奏するかと言うのにも大いに興味があった。片田舎の小学校だったから先生があちこちで不要の楽器を集めてきたりしてできあがった、おそらくはだいぶ不規則な編成だったのだろう。覚えているのはバイオリンが4つ、アコーディオンも4つか5つ、フルート、チェロ、コントラバス、ピアノ、マリンバ、ビブラホン、バスドラム・スネアドラム、ボンゴもあった。生徒が手持ちの楽器を持ってくることもあった。テナーサックスを手に入れた友達がそれだけでチェロからテナーにパート替え、などというのもあって、この友達はもしかしたらチェロが嫌いだったのかな、などとも思ったりした。こんな感じの編成で、生徒だってピアノを習ったことのある子がたまにいたりする程度でほぼ全員素人だったのだ。
 もちろん私も素人の一人で、そんな中バイオリンに割り当てられた。奏法はその楽器を担当していた先輩から後輩に引き継がれる。私を教えてくれたのは少々性格のキツイ女性で、結構厳しく躾けられた。大体わかると思うが1本の弦だけをクリアに鳴らすのはそう簡単ではないのだが、他の弦に弓がふれると「なんてお前は器用なの」的な言葉責めをこの女性の先輩から頂戴するのである。この体験が今の私の性癖を形成している、と言ったらフロイトが喜びそうだがそこは良くわからない。たぶんうぶな小学生の私は素朴に苦痛を感じていたんだと思うのだが、そのうちそれなりに弾けるようになるともちろん演奏は楽しいものになった。
 先輩たちが担当してた年には先生がエレキギターで参加して「ベサメ・ムーチョ」なんかやっていた。私の年は小学校の開校70周年記念の年にもあたっていたので、そのための演奏会なんかもありずいぶん先生も腐心したことだろう。大先輩たちがやってくるというのもあり、昔の唱歌や軍歌、懐メロなんかも織り交ぜたメドレーを呼び物とすることにしたのだった。先生自ら作曲した序曲に続いて「めだかの学校」「兵隊さん」「鎌倉」「児島高徳」「戦友」「国境の街」など、全て先生が出来合いの編成に合わせて編曲したものを、休日を返上して練習した。後世の性癖への影響はともかく、今の私の音楽の趣味がこんな体験に基礎をおいていることは間違いない。私のインデックスには書生節だの昭和のメロディだのがプログレやトラッドやシャンソンや印象派なんかと平気で混在している。バイオリンはその時の2年間程度でその後ほぼ触る機会が無くなった。会社に入ってから1年ほど習っていたが、その頃は今よりも仕事熱心だったので忙しくなった時期に止めてしまって今に至っている。リタイア後にやることの候補の一つになっているのだが、私たちの老後がそういう習い事を悠々やれないほどに貧しくなっている可能性は高い。
 そんな思い出の強い器楽合奏の演目の中に「ソナタ ハ短調」と楽譜に書かれていた曲があった。バッハの作曲と言うことだったのでそう覚えていたのだが、後年その曲を探そうとしてもハ短調のソナタにそれらしき旋律を持つものが見当たらない。だが今日の未明にそれらしきものが見つかった。BWV1020。ところがそれはソナタではあってもト短調であり、チェンバロとフルート(或いはバイオリン)のためのソナタの第一楽章だった。調性が異なっていること以上に驚くべきことに、この曲はBWV1020という Bach-Werke-Verzeichnis(バッハ作品主題目録番号)が与えられているが今では偽作とされているものだったのである。いろいろ驚くことはあるが、私のならったのがハ短調だったことは、当時使っていた楽譜に変化記号(記憶ではシャープだったがたぶんフラット)が三つついていた記憶、市の催しに参加したときの演目が「ソナタハ短調」で楽譜にも”C Moll”と書いてあったような記憶を併せるとかなり確度が高い。演奏用の編曲が後世なされたのか、あるいは同じモチーフで異なる曲があるのかは私には今のところわからない。ただネットで聞いたBWV1020は、いくつかのところで私たちのあの時習ったものとは異なっているように思われる。そのこともどちらの仮説がより正しいかの決め手とはならない。まあそのうちまた何かがわかるかもしれないのだ。今の問題は、このBWV1020を含む作品集のCDを買い求めるかどうかと言う金銭的な問題にただ尽きる。

_ 追記:書いたのを読み返してて気づいたが、旋律に違いがあるのは、もしかすると、小学生が演奏しえないために先生が即興で書き直した可能性がある。偽作とはいえ演目には良く取り上げられる名曲であるが、小学生が正確に弾けることは期待できないからである。記憶の旋律と探し当てたBWV1020のそれを比較するとそのことがわかるのかもしれないが、それを確認するためにはピアノの双方の知識が要ることだろう。



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