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2021-04-11 [長年日記]
_ 日曜の朝。昨日気になっていたレイリー分布という分布関数のことを英語版Wikipediaで見てたら、1905年のネイチャーの編集者への手紙欄に関連の記事があるらしかった。こいつ、読めるぞ!というわけで打ち出して眺めてみた。同じページにはジーンズさんが黒体輻射に関する投稿をしてたようで、プランクが計算した結果がどうのこうのと書いてる。この年、ジーンズ28歳、レイリー卿63歳、プランクは…おおっ!今「プランク」って調べるとヨガで言う「板のポーズ( सनासन Phalakasana ファラカサナ)」が真っ先に出てくるんだな。横道。当時のマックス・プランクは47歳くらい。
さて問題のレイリー分布なのだが、実は統計学の巨人カール・ピアソン(当時48歳)の問いかけに答える形で紹介されている。ピアソンが何をきっかけに思いついたのかはわからないが、「次の問題の解き方の参考になること知ってる人いたら教えて。$O$と言う位置にいた人が、真っ直ぐ$l$ヤード(※1ヤードは0.91メートル)だけ歩いて、その後適当に向きを変えてまた$l$ヤード歩きます。これをn回繰り返したとき、彼が$O$からの距離$r$と$r+dr$の間にいる確率は?」と言うピアソンの問いかけが1905年7/27号に載った。その後8/3号にレイリー卿が「この問題は、自分が1880年と1899年に論文に書いた、ランダムな位相をもった振幅1の等周期の多くの振動の問題と同じですねー。答えはこれこれ、ただし$n$の大きいときのね!」とか言って挙げた式がレイリー分布である。つまり、レイリー分布はマルコフ鎖の拡がりに関係する分布ということになる。この記事を見た質問者のピアソンは「レイリー卿の解、秀逸w つまり広大な草原をうろつく酔っ払いさんを探すなら最初にいた場所を探せば良い訳ですね?」
あえて軽い書き方に意訳(?)してみたのは、多くの論文誌に用意されている"Letters to the editor"というコラムは、こんなふうに知性ある人たちのためのBBSのようなものだったと気づいたため。2ちゃんねる風の言葉で書いても良かったけどもはや伝わらないような気もしたので「答えキボンヌ」とかにはしませんでした。先日はボルツマンの衝突パラメータ$b$に驚いたけど、原典をあたるとなかなか面白いものが見えてくると感じた。そういうものにほとんどコストゼロでアクセスできることには感謝しかない。それを楽しめる程度には私に教育の機会を授けてくれた多くの人たちにも。