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けいりう堂日記

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2013-07-15 [長年日記]

_ 板橋に来た。

image  板橋は中山道と川越街道の追分のあるところ。ここにいたばし観光センターという施設があるので、川越街道の資料をいただきにやってきた。
image  係りの方がいろいろ説明してくれて、大きな庚申塔のある東光寺に案内してくださったのだった。センターにもレプリカがある。プラスチックのようなものでできているのに見た目完全に石。  暑いので川越街道を歩くことはせずにおそば食べて帰宅。10年ほど前に中山道を歩いたころ、たしかこの観光センターはなかったのではないかと思う。宿場制400年の2000年の頃からこのような施設があちこちの宿場跡などに作られるようになり、それから10年。街道を旅する人たちに対してこれらの施設はどのように影響したか。その効果のごときを振り返ってもいい時期にあるのだろうと思う。

_ [漫画] 水木しげる漫画大全集081「不思議シリーズ 全」

ビッグコミックゴールドに1992−93までの間に掲載された。以下ノート。

*「天使病」。「内科と精神世界と幸福経済学を一つにした新医療"幸福医学"」とある。ブータンで"国民総幸福量GNH(Gross National Happiness)"が初めて調査されたのは1972年ということであり、提唱者は第4代国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク。1972年とはこの王の即位した年である。世界的に幸福の量的な計測が行なわれたのは1990年代のようである。そのような背景がこの作品に影響していることと思うが、まずそのような経済学的なアプローチよりはるかに先んじているブータンの取り組みには驚嘆すべきことだ。当時10歳の俺はそんなことに思いを寄せることもなかったのだが、ブータンという国の名前はどういう訳か水木しげるの「悪魔くん」で目にした記憶がある。このことはいずれ続く巻であらわれるいくつかの悪魔くんに再び出会うときに再考することになるだろう。「天使病」とは「人間が真面目にできていて人情深ければ貧乏するに決まっている。強いて病名をつければ『天使病』とでもいうべきものだが…」と1965年の「ろくでなし」という作品にもあらわれている言葉。こういう解題がちゃんとついてるからこの全集は完全性が高い。

*「夢先案内猫」荒俣コリャマタ先生登場。「タイヤキしか食わないとか。平豚舎(←『世界大百科事典』の編集をしていた"平凡社"のことと思われる)の編集室に住みついているとか…いわれてますが、それはすべて世をあざむく仮の姿…先生こそ一万年に一人生まれるか生まれないかという奇跡の『魔導師』です!隠れた世界の帝王です!!」「ギョギョーッこれはアラマタなんと!」しかもその正体は三つ目の魔人。あの風貌は仮面だったのであるww なお一万年に一人とは、「悪魔くん」の設定と同じ。

*「わが方丈記」解題に曰く「…幸福観察学会は、作者が創設した実在の学会。学会とはいえ、水木個人の活動であり、第三者の幸福を観察するのが目的。」路上観察学会へのイロニーのようなものかもしれない。タモリが副会長の「日本坂道学会」よりも会員が1人少ない。

*「猫の町」。

--「日本国憲法と同じようにちょっと夢想的だが、猫の町になればこの町の人間はもっと豊かになれるのです。日本国憲法と同じです」このセリフは護憲的な意味合いを持っているのかどうかは良くわからない。

--「かつてアフリカのドゴン族はいった…猫はかしこいネ、自分で食うために働かないヨ。」「なんという味わい深い言葉だろう、…」

*「木喰」荒俣コリャマタ先生はねずみ男とたい焼き屋の前で口論。勢い余ってねずみ男の食いかけのたい焼きを食べて吐き戻してしまう荒俣先生にねずみ男曰く「そんなにきたながらなくても、同じ"半妖怪"じゃねえか。」とねずみ男。ねずみ男はそのあと水木さん宅に押し掛けてその様子を語る。水木さん曰く「なるほど、昔から半妖怪は、タイヤキを食うっていうからナ。」そんな設定いつできたというのかww。こうやってセリフを書き写して、というか打ち写していると、水木さんのセリフは句読点がきちんと書かれていることに気づく。漫画は「まるまると まるくまるめよわが心 まんまるまるく まるくまるまる」と木喰上人の歌で終わる。明恵上人の「あかあかや あかあかあかや あかあかや あかあかあかや あかあかや 月」を思わせるが明恵上人の歌より幾分作意が強い。

*「太歳」太歳というのは史記に表われるもので巨大な粘菌のような生物と言われる。これを冒してしまい体調に変化をきたした水木先生は超科学の河合先生(河合隼雄がモデルと思われる)に相談するが、水木先生はついに糞となりやがて屁となって亡くなってしまう。辞世の歌は「糞と化し 屁と消えてゆく わが身かな 人の形は 夢のまた夢」。因みに豊臣秀吉の辞世は「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことも 夢のまた夢」。

*「百歳教」。「十七才教(おいおい)」は井上喜久子。

--「最高齢の現役だとかなんとかおだてられて、一時間の余裕もない生活だ…」「ソレ自分でうれしがってるんじゃないの。」

--「あなたのご主人(←水木さん)が研究しているユングのシンコロニスティ(共時性)というのも同じことです、思うということを見直すべきです。」百歳教を興してぼろもうけするねずみ男は冥土で地母神(閻魔王を配下にしている)の裁きを受ける。地母神は遮光器土偶の姿をしており、配下には多くの土偶が従っている。その中に水木さんの良く描く猫のような土偶がおり、地母神の側近であることがわかる。百歳教を廃すことを約して現世に戻るねずみ男は今までにないくらいしおらしく猫の食べかけのケーキを「奥さん、猫の残りでいいです。わたしはねずみですから」とおとなしく受け取りつつもねずみ男は"九十九才教"を考えているのです。

*「解説」荒俣宏。「じつは登場人物のほぼすべては実在している!…かく言う解説子も同類であるが、水木プロにお邪魔するたびに不思議な人々の出入りが増えていくありさまを、驚きとともに見守ってきた生き証人である。」このありさまがまるで白樺派のようだと荒俣コリャマタ氏は言う。ああなんという得難い全集であることか。全巻出版の成就と読了を願ってやまないものである。


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