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けいりう堂日記

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2010-10-18 [長年日記]

_ [新聞を読んで]

日記の更新が続いているとついついカテゴリを増やしてしまう。今日の日経は久し振りに印象的な記事が多かった。今回のノーベル賞の快挙の影響で「わが社は以前から基礎研究の重要性を認識しており…」のような記事もあったがくどくどしければりゃくす:

・ブータンでは経済指標として「国民総幸福量GNH」を使っている。2年ごとの聞き取り調査で人口67万人中8000人程度のデータを集める。一人当たり5時間もの時間をかけて面談をしてデータをとるということで、そのコストも結構なもんだろうと思う。これを年ごと・地域ごと・年齢層ごとなどで比較するといろいろ面白いらしい。どの地域のどんな人が怒っているか、あるいは慈愛に満ちているかなんかを知るんだそうだ。何年か前の放送大学で受講した経済学入門で、林先生が幸福の度合いは数値化できるという講義をしていたのを思い出す。いろんな集団を比較するのに幸福量を使うのは意義がありそうに思える。企業間や組織間の従業員とかね。

・今年のノーベル経済学賞は「サーチ理論」の開拓者たちに贈られた。売り手と買い手が財の取引の際に交渉を重ねる仕方を扱うようで、たとえば失業保険という本来失業者を救済する仕組みがかえって失業を続けることを助長しうる、というような計算ができるらしい。売り手と買い手がそれぞれ単独の場合でも初期条件に依っていろいろなシナリオが表われそうに思える(私は頭の中で今ライフゲームを想像している)が、それぞれ複数になるとどうなるのだろう。"単純な法則が非常に多くの複雑な状態を示す"というのは非常にあり得ることだ。

・ブノワ・マンデルブロ先生が亡くなった。フラクタルという概念は自己相似的とか特徴的長さが無いとかいう奇妙な構造が実は至る所に見られるというその外見的な特徴ばかりでなく、まさに(ジェネレータと呼ばれる)単純な規則が非常に複雑な構造を生みだすというダイナミックな面もその魅力と思う。私のD論がなんとか無事にまとまったのも実はこの人あってのおかげだったりするが、あれから遥か20年後の今であっても、市場の失敗の原因をノンノーマルな市場の振舞いに求める経済物理学の誕生に感銘を受けて間もない。死因はすい臓がんとのこと。享年85歳。ご冥福を…。 

_ [東海道] 「街道てくてく旅。東海道五十三次完全踏破」(DVD)第1巻を見終える。

昨日の日記に書き忘れたけど、上の歯の治療を受けてやっぱり違和感があってもちゃんと義歯は入れとかなきゃ、と張り切って義歯を装着したら高さを調整するためにレジンを盛った部分がポロリと取れた。急遽歯医者を予約して、今私の口内は大変不安定です。こういう事件は食欲にも少なからず影響を与えてしまうのだが、なんか風邪のまえぶれのようなヘンな調子を感じているので、なんとなくもつ鍋を食べるのが良いのじゃないかと思って食しつつテルの出てる件のDVDを見た。最初の方はしんどそうだったテルも藤沢を過ぎたあたりから旅を楽しむ余裕が見えはじめたようだった。飛び込んだ楽器屋でリチャード・クレーダーマンを弾き出したのにはびっくらぎゃうてんだ。しかも数十秒間BGMに使われてたほどちゃんと弾けてた。

特典映像に、旅の準備のことが録画されている。足に故障のあったテルのために負担の軽い歩き方をコーチしたり、体にあったインソールを用意したり、東海道の成り立ちなどを座学で学んだり。シリーズの他の旅ではこの様子は明示されていなかったような気がする(てっしーが甲州街道を歩く準備のときにカメラの撮影の仕方を習ってた、というのはあったけど)が、おそらくみんなこういった準備をしているんだろうと気付いた。このシリーズの旅人の体は日本の宝みたいなもんだろうから。番組で壊しちゃまずいですもんね。

あと、映されている人もさることながら、撮影隊の一人が無理して肉離れを起こしたという笑えない(笑ったけど)ひとコマもあったりして。ドキュメンタリーとかサイコロの旅の類を見てていつも思うのは、映ってる人もさることながら、重たい機材を抱えて被写体とほぼ同じ険しい道を進む人こそ称賛に値するのではないかということ。映し方によっては、被写体以上に危ない所に立っているのではないかなんて思うこともある。

当然DVDは第二巻に続く、ということになる。

_ [食べ物・飲み物] 五目豆・その後。

週末にまた五目豆を煮始めた。材料を買いそろえたつもりでなぜか2番目に重要な材料であるひじきを買っていなかったことが判明して、ひじきだけ1日遅れで投入した。今日も帰宅してからしばらく煮込んでいたのだが、ここで私は素晴らしいことを思いついた。きっと断酒の効果がやっと脳に回ってきたのだ。

それは、煮詰める前の汁気の多い五目豆を取り分けて、ご飯と一緒に炊けばそれで五目御飯になってしまうはずである、というアイディアだ。すごいだろ。でも実は結構有名な事実かもしれない。お吸い物でキノコご飯炊くよりはいいんじゃないかと思うんだが。ご飯とおかずの素材が全く同じになってしまうというリスクは否定しない。

_ 自分が感じている違和感を、もっと信じてやっても良いんじゃないかな、なんて今日はそんなことも思いついた。普通「気のせい」の一言で片づけてしまうことだ。そういう風にしてその違和感を無視することが功を奏する場合もあるが、文字どおりに解釈すると「気のせい」とはつまり「気」が原因で生じる疾患とか症状とか障害という意味なのではないだろうか。「氣の所為」と書くと感じが伝わるかな。そうでもないか。元ネタになっているのは、対人関係療法の本に出ていた「病者の役割」という言葉なんだが。療法を受けている人に「あなたは病気にかかっているのです」と明言することによって、だから必ず回復するのだという希望を抱かせることができる、という逆説的にも見えるやり方があるらしい。最近、仕事はできないけど趣味をおこなうのに支障が無いという「新型うつ病」といううつ病のタイプが話題になっているようだ。TVでみたある治療者はこのタイプに対しては厳しく接することも大事だというようなことを言っていた。そこに何か違和感を感じたのがきっかけかもしれない。こころを定量化するという難しい手順の中で、しかし患者は何らかの苦痛を感じているからこそ受診しているのだ、という事実は忘れられるべきことではないだろう(私がそういう扱いを受けたことがある、という意味では無い)。


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